元日の朝、東の庭に、おめでたい来客があった。早速のお近づきを願って、奥部屋から『沖縄の動植物』『沖縄の野鳥』などをかついできて、じっくりと目を行き来させてみる。あまりお見かけしないお姿、きっと珍しいお方に違いない!と私の胸は高鳴る。結局、興奮しながらめくった分厚い中に、その方は見当たらず…もしかすると結構お馴染みさんなのかな、と思いつつもしばらく釘付けになる。
まぁ、何はともあれ、できすぎた話、いや、ありがたい事である。酉年幕開けの朝に、小さき二羽を引き連れてのご来訪。威風堂々とした鳥の親子を拝む。
「正月ぬすぃとぅむでぃ 元日ぬ朝ぱな」元日の朝方にアコウの大木より、東の空に飛び立つ鷲の親子を詠んだ「鷲の鳥節」という民謡がある。新年に、または祝いの席に欠かすことのできない、八重山の人々がこよなく愛す一曲だ。朝日を浴びて舞い飛ぶ雄大な世界を想う。優に一メートルを超える羽の広がりなどは、まさに正月を彩る「綾羽/あやぱに」ではないか。
さて鷲の鳥節の情調に浸りつつ、まことに不謹慎だが、食すること以外、鳥は滅法苦手である。嘴の鋭さ、鶏冠の質感、それにあの首のくねり、動物好きの私でも鳥だけはご勘弁のはず。重度の鳥恐怖症にも関わらず、新年早々に興味津々であるから、今年はきっと嘉利の年!不思議とたいへんご機嫌になる。
ところで我が家の庭にはマイペースなビーグル犬を筆頭に、お公家さまのような眉を持つ四つ目の黒が二匹いる。来年は君たちが主役だなと思いつつ、年を飾る十二支のご来訪を思い描く。ねずみ・鳥・犬は問題ない。まぁ、うさぎとへびもひょっとするかもしれない。さて、牛・寅・馬・羊・猿・猪が庭でにぎやかに遊ぶ姿…空想好きの私には愉快でたまらなく、にんまりとなる。辰の年はなおさらに華やぐのであろう。
さぁ今年の主役は…今日もりっぱに子連れ出勤である。我が家は朝の点呼が日課となり、皆大はしゃぎだ。ただ一人の仏頂面は、今日もこたつで丸くなっている。
(沖縄タイムス「唐獅子」2005/1/21掲載)
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