彩 思 い [ ayaumui ]

『彩思い(あやうむい)』 

ブログ『彩思い』は新城音絵の文筆記録のページです。
オフィシャルブログは『南島游行』へ移行いたしました。

愛しき穴との格闘!


前回の病院から 1週間の時間が経った。
5月2日 水曜日 今日は病院の日。
(これまでの穴の経過は 
[ 初体験 ]と[ 太ももに「穴」 ]でお読みください。)

母と二人 タクシーを降りて 玄関からすぐの整形外科へ向かう。
「15時」と書かれたピンクのクリアケースに
予約書と病院のカードを入れ 看護婦さんへお渡しする。

「きっと今日こそは!」という期待は もう持たないことにした。
なるべく ショックの少ない方 精神的にできるだけ凪いでいたい。

診察台に腰を下ろし 腰を回転させて クイッと 足を乗せた。

傷とのつきあいも 3週間ともなれば
いかに肌にダメージが少なく
痛さを伴わずに テープを取るか!という課題も 今やプロ級である。

看護婦さんに サッサと剥ぎ取られないうちに 自分で丁寧に取り始めた。

ビー玉ぐらいの太ももの穴は サイコロぐらいになっている。

「どうだぁ~!」 と言わんばかりに 堂々とお見せした。

「ん~・・・ よくなってるねぇ・・・。」
先生の 静かな口調。(もう少し 喜ばせて欲しい私。)

静かな言葉は続いて・・・「ちょっと傷口 洗浄しようねぇ・・・。」

「あぁ・・・ はぁ~い・・・」 私もなんだか静かになる。

その時だ!
耳掻きの おばけのような棒に ガーゼを巻きつけて
太もものサイコロぐらいの穴に差し込んだ!

洗浄水をかけながら その棒を・・・
中の 空洞に沿わせるように ぐりぐりと回しはじめたではないか!

「おぉ~ イタイですぅ・・・!」
起き上がっていた私は
実際の傷の痛さと 視覚的な痛さに耐えられず 倒れこむように横になった。

「ん・・・ ちょっと痛いねぇ・・・」変わらず静かな口調の先生・・・。

「ちょっとじゃな~い! 先生 先に言ってよ~!」(私の心の叫び)


正直 言って 犬に噛まれた時よりも 痛かった。

痛かった ような気がする。


病院通いから 早く 卒業したい。

やっぱり 「今度こそ!」 である。

2007.05.02 カテゴリー: 021 日々のいろいろ | 個別ページ | コメント (0)

太ももに 「穴」。


4月8日のできごとだった。(その日の詳細は
「初体験」にて)
私は 左足の太ももを 犬に咬まれた。
犬に咬まれる という初めての体験をしてから
もうそろそろ3週間になるが いまだに私は病院通いをしている。

5月13日には 大きな舞台を控えているので
私の気持ちは 結構焦っていた。

今日も 午後3時に 八重山病院の整形外科を訪ねた。

診てくださっている先生は 小柄でキャシャな体形の
物腰のやわらかい やさしい方だ。

8日の あの時 救急治療室で診ていただいてから
私は その先生に 100%の気持ちをゆだねている。
いや 120%か 200%かもしれない・・・。


さて 今日は そろそろ病院通いも卒業だろう!という気持ちで出かけた。
本を読みながら 待合所で 名前を呼ばれるのを待つ。

コットンのロングスカートに コットンのチェック模様の長袖シャツ。
太ももの治療をしやすいように もうおなじみの このスタイルである。

最近は 脚全体の腫れもひいてきたので
脚を組むことができるようになった。

待合所のベンチシートに座り 脚を組み
最近また読み返している岡本太郎の『沖縄文化論』を
調子よく 読んでいた。

2,3日前までの 嫌な緊張感は もうそれほどない。
まぁ そろそろ 病院通いも卒業だ!
先生とのお付き合いも そろそろおしまいかしら・・・と思っていた。

20ページぐらい 沖縄文化論が進んだところで 名前を呼ばれ
私は しおり代わりにしている西表島の絵はがきをページにはさみ
岡本太郎さんの大きな声を 静かにバッグにおさめた。

腰まわり辺りのシャツを整え 処置室へ向かい
入ってすぐのカウンターテーブルに バッグを置いた。

いつものように 左足太ももの処置がしやすいよう
右手側が壁になるように 枕を逆にして 静かに横になった。

外科的な治療や処置に関して 私は滅法 弱虫・臆病である。
以前にも
「初体験!」で書き残したが
切ったり縫ったり というのは どうもダメである。

それにしても とてもおだやかな性格のお医者さまと
私の手を ぎゅっと握っていてくださる看護士さんに
支えられ 助けられてきた。

一時は 正常な右足と比べると 2倍 とまではいかないまでも
左足全体が1,5倍ほどに腫れあがっていた。
だんだんと散っていく内出血のムラサキ色は
まるで 空港の土産物屋さんに鎮座する あの紅芋のタルトのようであった。

それもだんだんと薄くなり 脚の太さも 右足とほぼ同じようになってきた。

2ヵ所 縫合されているうち
1ヵ所はなかなか出血が止まらず 傷口がふさがらない。
先生がおっしゃるには 血栓のあと  中に直径4~5センチほどのポケット
いわゆる空洞かできている とおっしゃる・・・。

「まぁ ちょっと時間かかるかもしれませんが
根気強く なおしていきましょう。
まぁ 肉の盛り上がりは 約1ヶ月ぐらい かかるかなぁ・・・。」

全身の力が 一気に抜けた・・・。
あまりにも想定外の状況に 私はあ然とした。

先生の言葉に続けて 私はゆっくりお尋ねしてみた。
「踊りのお稽古 始めてもいいですか?」

「やめといた方がいいでしょうねぇ・・・少なくとも傷が治るまではねぇ・・・
ばい菌入ったら 大変だからねぇ~。」
すぐに答えがかえってきた。

私の太ももには 今 直径4,5センチほどの
平たい空洞に通ずる穴が一つ あいている。

のぞいてみると 地球の裏側まで 見えるのではないか と思えるほど
穴らしい「穴」が 存在している。

小さいようで 大きいような口から続く 空洞の部屋。
まるで 太ももの中に 目に見えない世界があるようで
そこは異国か 異次元か といった感覚になる。

その異国か 異次元かの 小さくて大きな部屋を
私は太ももに感じている。

日に2回 シャワーで洗浄
ガーゼの角(かど)っこを その穴に差込み
血液を吸い込ませるように閉じる。

その上に もう少し大き目のガーゼを3枚重ね
ホワイトテープ3本で しっかりととめる。

私の太ももの 小さいようで 大きいようなポケットへの
これまた 小さいようで 大きいような口が ガーゼとテープで見えなくなる。

ガーゼの横から 先生が説明するために付けた
黒の油性マジックの点線がのぞく・・・。

ガーゼを取り替える度に その小さな穴に吸い込まれるように
行ったことのない世界が 私の中に広がって にぎやかになる。

そして また ガーゼでふたをすると
扉をバタンと閉めるように
または 観音開きの大きな窓を 両手でぐいっと引き閉めたように
また 静けさが戻ってくる。


異国の友よ 異次元の君よ
どうか お静かに 穏やかになさって・・・

決して 悪さをすることなく
決して 戸惑うこともなく

どうか おとなしく やさしくなさって・・・

お願い・・・  お願い・・・。


今はただ

ただただ 祈る気持ちである。

2007.04.25 カテゴリー: 021 日々のいろいろ | 個別ページ | コメント (2)

モンブランとワイン


今日は 父の誕生日である。
もう15年以上前になるが 私が15歳の時に他界した
私の愛する父の誕生日である。

生きていたら 今年は還暦の60歳。
昭和22年 亥年の生まれの人だ。いわゆる団塊の世代の一人だった。

父が好きだったモンブランケーキを一つ
そして 母と私が好きなワインを一本

今日のお祝いの日に 準備した。

お仏壇に ちょこんとお供えして
私たち二人 ちょこんと座る。

ろうそくに火をつける母のそばで
私 「ねぇ やっぱり誕生日も お線香立てるのかなぁ・・・」

母 「歌 うたうのもねぇ・・・」

白檀の香りのお線香に火が灯った。

三本のお線香を 一本づつ 大事に 大事にたてる母・・・

やっぱり 手を合わせるのはどうも・・・と思ったらしくて
お仏壇の父の写真に向かって 話し始めた。

「パパ 今日はパパの誕生日ですね。そちらでも 歳とりますの?
 それとも若いままですか? あなたの好きなモンブラン どうぞ召し上がって・・・
 今夜は ワインで乾杯しましょっ!」

そして やっぱりいつもの癖で 最後の〆は
静かに 手を合わせて ゆっくりと拝んだ。

父が生きていたなら と思うことが よくある。
特にお酒好きの私は 大人になってから
父と二人で 飲みに行きたかったな・・・って よく思う。

今年度いっぱいで 退職したであろうから
来年の4月からは 父が夢見ていた自由人生活が始まっていただろう・・・。

夜はきっと 私の趣味である料理で 3人で飲み明かしていたであろう

残念だけど でも残念だと言ってしまうと 父がさみしくするだろうから
残念だという言葉は 出さないようにしよう。

私の中にいる父を感じながら 今日もまた 母と語り合おう・・・。


「パパ おめでとう・・・」
Gobirth

2007.04.21 カテゴリー: 021 日々のいろいろ | 個別ページ | コメント (0)

初体験!


ちょうど 10日前のことである。
忘れもしない 4月8日 日曜日だった。

その日は スイスからの特別なお友達をお迎えして
夜八時開演の舞台をひかえていたので
そろそろお仕度のために 楽屋入りしようかな というところだった。

お庭の3匹のワンちゃんたちに ごはんをあげて
ホッとして お庭を眺めながら 今夜の舞台の運びを考えたりしていた。

その日は いつになく準備が早い時点で 万端整っていたので
仕度に入る前の気分も上々で 心地よい緊張感に包まれながら
気持ちのよい時間をすごしていた・・・その時!

3匹のうち 若い2匹が 突然 ケンカをしはじめた!!

目の前で 子供のころ お気に入りだった絵本『ちびくろさんぼ』の
トラたちの ぐるぐるぐるぐるのシーンが もっとハードなテンションで展開した。

その場から 逃げようとした その瞬間!

ギ ャ ー

黒いスパッツの上から 私の左足太股を が ぶ り っ!

私は気がどうにかなりそうな中 とにかく急いで お風呂場へ急いだ。
急いでスパッツとくつ下を脱ぎ放って シャワーの水を勢いよく 傷口にあて・・・

ギ ャ ー

痛 い・・・ 我慢・・・ 痛い・・・

直径7センチほどに まぁるく刻まれた 彼の歯形
そして 牙がくい込んだであろう 深い傷が一ヵ所。
歯形のまわりは 見る見る青くなっていった。

ちょうど備えられていた滅菌ガーゼで ぐっとおさえ テープで強めに止めて
念のため 病院へ・・・  開演3時間前のことだった。

その日は 日曜日で 時間外だったので ERへ・・・
知り合いの看護士さんに訳を話して 傷口を診るなり・・・
「あ~~ 出血がすごいねぇ~ 動かないようにね。 はい 車いすねぇ。」

外科の先生に 診ていただくと・・・
「ん~ 縫わなきゃねぇ・・・ 」

処置室のベッドで 横になり 天井を見ながら 先生の言葉を聴く。
「傷口開きますね 汚いとこ取りますよ~ 洗いま~す。縫いましょうね・・・。」

そして最後に一言 「お手洗い以外は 動かないようね!」

その言葉を聴くまで 踊る気満々だった私は
急に重傷になった気分になって そうすると急に痛み出してきた。

あっ 私の初体験・・・ 三つだ。
一つは 犬に噛まれたこと。
二つ目は 体を縫ったこと。

そして もう一つ 舞台に穴をあけてしまったこと。(申し訳ございませんでした)

結局 お手洗い以外は と言われましたが
違反して 二階の劇場までの 約20段の階段を 一往復。

私は踊り手としてではなくて MC担当で出演させてもらった。
他の出演者の助けもあって 無事に舞台は終演を迎えることができた。

そして 私はまだ合格が出ず 抜糸に到っておらず
病院通いの日々を送っている。


うららかな春に 私のお恥ずかしい初体験談 失礼をいたしました。

2007.04.18 カテゴリー: 021 日々のいろいろ | 個別ページ | コメント (0)

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