母の定期検診に、朝早々と病院へ出かけた。お決まりの長期戦になる覚悟で、まぁ久しぶりにわが島の総合病院視察でも、と少し偉そうな同伴者である。
沖縄県立八重山病院は、石垣市民はもとより、竹富町、そして与那国町に暮らす、あわせて約五万人の人々が携る病床数三五〇床の総合医療機関。今から三三年前の五月一五日、日本復帰の日に琉球政府立病院から引き継がれた五病院 (名護、中部、那覇、宮古、八重山)の一つである。総病床数八六五床でスタートした沖縄県病院事業が、今や二,六六四床。日本復帰当時、立ち後れていた医療事情も年々整い、また民間の医療機関等も加わって医療事情は全国平均に近づきつつある、というが離島はいまだに医師不足。緊急を要することの多い脳神経外科はあと二ヶ月で閉鎖らしい。
さて建物も老朽化の進んできたところが多々ある。それに圧迫感のある低い天井、雨漏りによる黒いシミも気にはなるが致し方ないだろう、まだまだ我慢ができる。例えば長時間待たされる状況を考えてベンチシートの配置一つも重要だと思う。人目の気になる症状の人・時だってある。乗り合いバスのような向かい合わせは非常に落ち着かないものだ。震え上がるほどにききすぎた冷房、真夏でも上着が必需である。外気との差が激しく、出入りの時には一瞬立ちくらみがするほどだ。ご高齢の皆さんは平気なのだろうかと心配になる。そしてどうしても耐えられないこと、改めて欲しいことがある。それは若い看護士さんの年輩者への言葉づかいである。私だってまだまだ若輩者だが、身内への対応がそれだと大分がっかりとする。寝たきりの方も、認知症(痴呆症)の方も、島の大先輩である。礼節を守ることを忘れずに接していただきたいと強く願う。
心身にダメージを負った患者が、さらなる不安や苦痛を抱くことのない「ここに来たからもう安心——。」が欲しいものだ。ほんの少しの気づかいや心配り、細やかな対応や工夫は、きっと大きなゆとりと癒しの空間を生むに違いない。今、それこそが肝心である。
(沖縄タイムス「唐獅子」2005/5/13掲載)
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