ラジオに夢中だったあのころ、石垣島ではAM放送もFM放送もクリアに受信できるのはNHKのみで、中でも私のお気に入りは毎週土曜日の『リクエストアワー』。熱心なリスナーだった私は友人と一生懸命に貯金をして、夏休みに豊見城のNHK沖縄放送局のスタジオにお訪ねしたこともありました。
民放局で好きな芸能人がパーソナリティーをしている番組があれば、ラジカセのアンテナをあっちに向け、こっちにかたむけしてみたり、またはラジカセをかついで外へ移動したり、屋上に上がったり…。少しでも雑音が少なくなるなら、番組終了までアンテナをずっと握りしめていることも。とにかくラジオに無我夢中の中学時代でした。
番組へのお便りも、今ではFAXやEメールが主流のようですが、友達と多種多様なカラーペンを持ち寄って、葉書を色とりどりに仕上げ、学校への道すがら祈るように投函したものです。指折り数えて放送日を待つ緊張感、ペンネームをよみあげられたときの気恥ずかしさ、リクエスト曲が流れた時のホッとした心持ち…。今思えば、内緒にしたいこと、秘密にしていることでも、素直に話せる、相談できてしまう、送受信間の何とも言えない距離の近さに、高校受験を控えた思春期の私は温かく支えられていたのでしょう。
さて、石垣島も受信チャンネルが増え、久々にラジオに浸っている今日このごろの私です。生放送のライブ感は、私のためにだけ、ささやいてくれているような感覚があり「対お茶の間」のテレビとは違って、ラジオは「対個人」のエンターテイメントだ!と思えるほどです。
最近では雑音無しで世界中から受信できるデジタルラジオなどもあり、また以前のような至難のアンテナ技も必要ではありません。テレビは総デジタル化を目指して目下急進中…。ラジオは決して派手でも、大仕掛けでもない、言葉と音だけでつづられるシンプルメディアです。でも元祖「参加型」のラジオが持つ「心の通い合い」こそ、私たちの求めている真の「双方向メディア」ではないでしょうか。
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