「健康ブーム」は止まるところを知らず、半ば強迫観念のような現象を見ていると、それに逆らえる人の方がかえって少数派なのかもしれないと思えてきます。テレビも雑誌も「ヘルシー」「ダイエット」「○○に効く!」などのタイトルがまだまだ目につき、追いかけっこをするように健康を売り物にした商売が日々登場しています。その中でも特に食品に対する偏執的な健康志向を「フード・ファディズム」と呼ぶようで、極端なこの現象が、近年ますます強くなる傾向にあるようです。
私たちの「健康」とは一体全体、何なのでしょうか?つい最近まで、重大な病気でないことが健康だと考えられていました。日々の暮らしの中でのちょっとした不調や疲労を「不健康」とは言わなかったはずです。
もちろん重大な病気につながる無理や過信はいけませんが、日によっての調子の悪さや身体の疲れは、生きている証しであると思いたいものです。物が豊かでない時代を強く生き抜いてきた先人たちはきっとそうであったはずなのに、物品も情報も何不自由なくあるこの時代の私たちの方が病と隣り合わせにあるなんて、なんとも情けないものです。「健康」とはいかなる状況におかれても、たくましく生きていく精神の力である、と私は信じています。
さて、テレビ番組の特集で放映された商品が番組終了後にスーパーから姿を消す現象も、この石垣島でさえ普通に見られるようになりました。ヨーグルト、豆乳、今は寒天、お次は何でしょう。「妻に頼まれ探し歩いて、揚げ句にはおれの方が痩せているぜ!」という笑い話も。ただ、日ごろから食している商品の特集が放映されると「あら!体にいいのね、うれしいわ」と思う反面、非常に困った事態になります。何せ離島では商品の補充に時間がかかり、いまだに寒天が手に入らないんですよ。
私たちが「健康」であるために重要なのは「バランス」でしょう。でもそれが難しいから手っ取り早い特定の物に集中していまいがちです。本末転倒にならないように、「健康・生きる力」を養いたいものです。
(沖縄タイムス「唐獅子」2005/6/24掲載)